空いちまい(下)

「放射能が地面を、そしてその地面が育てた水や農作物、山菜やきのこを汚染した」というのは観念に近いかもしれないけれど、汚染されてもなお、野苺の甘酸っぱさは、まぎれもなく私の口の中に実感としてある。震災後、何度となく見た放射性物質の拡散予想図が私の空を狭くした。空の狭さは、私を動的にした。東北もまた、空が狭まって出会った土地である。動くということは逆に、空の広さを実感することでもある。これから私は、狭くなった私の空を、ハトと旅することによって広く広くしたいと思う。

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