こつぜん

hato3

 

祖母は、私の小屋を見ずに死んでいった。けれども、生きていたとしたら小屋を見に来たか、そう自問すると、それはありえない、と自答するしか他にない。であれば、死んでしまった今の方が、祖母は、私の小屋の近くにいるということになりはしないか。私の小屋の前には、見えないくらいの量の水が流れる川がある。数日雨が降った後にそれはこつぜんと現れる。その、こつぜんと現れる川にあわせて。(『ハトを、飛ばす』連作のうちの三冊目「こつぜん」より)

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